西九州新幹線をめぐる複雑な問題を図解で理解する
博多~長崎間143kmのうち、新鳥栖~武雄温泉間の約50kmが「未合意区間」として整備されず、全線開業できない状況が続いています。
「お隣の家の方から、表通りに出て行くのに、あなたの庭に歩道を造ってくださいとお願いされたので、分かりました、それに協力をしましょうとなったわけです。やっていたら、後から、速く行きたいので、これは歩道じゃなくて、高速道路にしなさいと言われているようなものなんです。」
― 佐賀県の主張(2020年国土交通省との協議より)
現状:約30年の開発期間を経て、高速新幹線としての実用化は技術的課題により断念。 高速鉄道での本格実用化はほぼ皆無(日本では断念)。2023年に試験走行設備の撤去が決定。
項目 | フル規格 | ミニ新幹線 | スーパー特急 | FGT |
---|---|---|---|---|
線路幅 | 1,435mm | 1,435mm | 1,067mm | 可変 |
最高速度 | 300km/h | 130km/h | 200km/h | 断念 |
建設費 | 最高 | 低 | 中 | 断念 |
直通運転 | × | ○ | ○ | 断念 |
実現性 | ○ | ○ | ○ | × |
「ミニ新幹線も標準軌(1,435mm)なのに、なぜ130km/hしか出せないの?」
現在、JR東日本では板谷峠を貫く約23kmの「米沢トンネル」の構想・検討が進む段階にあります。 これが実現すれば、緩やかなカーブでトンネルを貫通し、時速200km超での高速走行が可能になり、 東京―山形間の所要時間は現在より10分程度短縮される見込みです。
高速化には線路幅だけでなく、線路の形状(線形)こそが最も重要
フル規格新幹線が高速なのは、標準軌だからではなく、
緩やかなカーブと勾配で設計された専用軌道だからです。
2025年8月19日、佐賀県の山口知事、長崎県の大石知事、JR九州の古宮社長による約1年3カ月ぶりの三者会談が開催されました。
出典:読売新聞 2025年8月20日、Yahoo!ニュース NCC長崎文化放送
「西九州(新幹線)には特殊事情がある。少なくとも(費用負担が)定価というわけにはいかない」
「大変高価だ」(約1,400億円以上の負担について)
「国がFGTの断念の経緯を踏まえ、解決策を出すよう働きかけていきたい」
「利便性の確保や採算性の確保でアセスルート(佐賀駅を通るルート)が一番適している」
「(関係機関の合意は)FGTで止まっており、他の新幹線とは違うところがある」
「財源は3者で国に働きかけていくのがいい」
出典:国土交通省「ご説明資料」(2021年11月)より
この問題は単なる交通インフラ整備の話ではなく、
国と地方の信頼関係と地方財政負担のあり方という、
より根深い課題を含んだ複雑な問題です。
解決には時間がかかりますが、関係者全員が歩み寄り、
九州全体の発展を見据えた建設的な議論が続けられることを期待します。